はじめに



インドの織物文化はとても古く、
地域によって生産方法や、素材、デザインなどが大きく異なります。
私たちは自分達の足で現地に行き原料の生産者や職人の工房、工場を訪ねます。


実際にストール作りに携わる人達と直接会話をすることで、
あなたにご紹介するストールが誰の手で、
そしてどのような環境で作られているのかを
自分達の目で確認する事ができています。


更に直接現地に行く事で
本やインターネットには載っていない情報も手に入れる事ができます。
その経験から得た知識や情報を
この買付日記を通じて少しでもあなたに知って頂きたいと思います。



ベンガルの伝統織物 ジャムダニ織り生産者を訪ねる

2018年1月



Natural LoungeバイヤーのMotoです。



毎年恒例となってきていますが
今年もインドの伝統織物・ジャムダニ織りの産地を訪ねています。
今回も3日間という短い滞在ではありますが
日本とは異なる生活様式や実際にジャムダニ織りを生産している工房を訪ねて
どのよう環境でストールが作られているのかあなたにご紹介したいと思います。



まず始めにジャムダニ織りってなに???
というあなたにジャムダニ織りの説明をさせてください。



ジャムダニ織りとはインド東部ベンガル地方に残る伝統的な手織りのことです。
17世紀のムガル帝国時代には既にあったそうなので
その歴史はかなり長い織物です。



そして、Natural Loungeとジャムダニ織りとの出会いは3年前に遡ります。
たまたまデリーで見つけた透き通るような一枚のコットンストールに惹かれ
調べていくと、それがインドの東部で作られていることがわかりました。



そしてその情報だけを元に
デリーから1600km離れた生産者を探しに行ったのがきっかけです。
当時の様子とジャムダニ織りの説明は
『インド買付日記 〜ベンガルの伝統織物 ジャムダニ織 〜 』
で見ていただけます。



デリーから1600kmも離れるとさすがに環境も変わり
街のあちらこちらに、ヤシの木やマンゴーの木など南国の植物があります。
バナナも庭で採れるんですよね。
雪国育ちの僕にとってはその光景を見るだけでも異国に来た気になります。
写真は昨年の夏に訪れた際の写真です。







今はこちらも冬なので果物が木になっている様子は見られませんが
日中の気温は20度を超えるため、ポカポカした日本の春のような陽気です。
生産者の村を訪ねる道中にはマスタードや、
コリアンダーの花が綺麗に咲いていました。







そして、ジャムダニ織りの生産者の家に着くと、
家族の皆が総出で迎えてくれました。
毎年温かく迎え入れてくれますが
今年は新しい家族も増えて、一段とにぎやかくなっていました。







みんな優しくて笑顔が素敵なんですよね。



そして、早速実際にジャムダニ織りをしている工房に向かいます。
この村ではほとんどの方が、このジャムダニ織りを生産していて
どこの家を覗いても実際に織物を作っている風景を見ることができます。



道を歩けば、
いつも通りあちこちから機織りをするリズミカルな優しい音が聞こえてきます。







そしてまず糸車で糸巻きをしている工程を見せてもらいました。
若い女性が 慣れた正確な手作業で糸を巻いていきます。







この女性が着ている伝統衣装の色合いもまた素敵ですよね。







最近デリーなど都市圏に住む女性の多くが洋服を着るようになってきていますが
こうした伝統衣装をみると服飾は文化だと改めて思います。
勝手な事をいえばずっと残っていってほしいんですけどね。







話が脱線しましたが、
この巻いた糸はシャトルにセットされて、織物のヨコ糸になります。







タテ糸は機械で撚った糸を使いますが
ヨコ糸には手で撚った糸(カディー)を使うことが多く、
繊細な糸を使うからこそ手で感触を確かめながら巻いていきます。



前回訪れた際は、おばあちゃんがこの作業をしていましたが
子供からおばあちゃんまで家族みんなで協力して
一枚の織物を仕上げるんですね。







何百年も昔から続く方法で作業している姿を目にすると
まるでタイムスリップしたような感覚になります。



それにしても今僕が来ている場所には外国人が全くいません。
町を歩くと僕だけめちゃくちゃ浮いています。笑



デリーは外国人もたくさんいるし
街の標識や看板も英語表記が加えられていますが
この町は地域の言語だけが使われていて、まったく読めません。笑
インドの中でもまた違った雰囲気があります。



取引先のインド人がよく、インドには何十個もの国があるんだよ。
と話してくれますが、実際に来てみるとその言葉の意味がよくわかります。







気候もヒマラヤの麓の街のように冬場マイナス40度にもなるところもあれば
この街のようにバナナやマンゴーができるほど年中暖かい場所もあります。
気候や歴史にあわせて地域ごとに文化が異なる、
それが今でも残っているというのがインドの大きな魅力です。



そして、今僕がいるベンガル地方は湿度が高く夏は非常に暑くなります。
ベンガルの人達は暑い夏を乗り切るために
昔から気候に合わせた服を身に纏うようになりました。



その結果、綿や絹といった夏の天然素材の扱いに長け、
さらに、薄くて通気性の良い生地を織る高い技術を彼らは身に付けました。
それが今ご紹介しているジャムダニ織りです。







僕たちはストールとしてこのジャムダニ織りをあなたにご紹介していますが
最近は高い技術が評価され、国内だけではなく
ヨーロッパのハイブランドなども洋服の素材として使用しています。



元々は伝統衣装であるサリーの生地として使われていたジャムダニ織りは
形を変えて今では世界中の人に愛用されているんですね。





さて少し話が長くなりましたが次は、先ほど女性が巻いていた糸を使って
実際にジャムダニ織りをしている工房を訪ねます。
村の細い路地を進んでいくと、昨年も訪れた工房があります。
夏の暑さを凌げるように土で作られた壁には縁起が良いとされる絵が描かれています。







そして、久々のジャムダニ織りとの再会にワクワクしながら中へ入ると
狭い工房の中で職人たちが黙々と機織りをしていました。







いつも通り、細い糸が織り機にセットされています。
よく見るとセットされたタテ糸の隙間から職人の足が透き通って見えるのがわかりますか?
これだけ細い糸を使って織る技術はインドの他の地域では見られません。



そして手元を覗くと、女性たちが巻いていた糸がセットされたシャトルがありました。
この写真にある生地は、ベースが藍色でデザインの部分を水色の糸で仕上げています。
ちょうど撮影した時にボーダーデザインになる部分を織っていたため
水色の糸がセットされたシャトルが使われています。


デザイン部分が仕上がれば、またタテ糸と同じ色の藍色のヨコ糸に切り替わります。







ただ、この作業は普通の織りでもあるので、ここからがジャムダニ織りの真骨頂です。


上の写真にもある 白いお花のような柄は織りに糸でデザインされています。



下の写真はホワイトベースの生地に、藍色の糸でデザインをしている場面です。
デザインをする部分に同じ長さに切った糸を並べて
一本一本手と針でタテ糸に糸を通していきます。







拡大するとより糸の細さと作業の細かさがわかると思います。







この動作を繰り返して、生地にデザインをしていくのがジャムダニ織りです。
本当に気の遠くなるような、そして神経を使う技ですが
職人たちは手慣れた手付きでどんどん仕上げていきます。











何度見ても細くて素晴らしい仕事です。
いくつか写真を流れで載せてみましたが
なんとなくジャムダニ織りをわかっていただけたでしょうか?



そして今回も恒例のジャムダニ織り体験をさせてもらいました!
毎年1回やらせてもらっているので3度目の正直です。







今回こそは! と意気込みは十分でしたが、
手が震えて全くできませんでした。
年々手の震えが増しているようなきがします。笑
写真だけ見るとちょっとできそうな感じしてますけどね。笑



また次回来た時にはうまくできるように
日本に戻ってもイメトレをしたいと思います。笑



今回も生産者の皆さんの協力があり、
ジャムダニ織り工房視察、そして買付も無事終わりました。



何度来ても職人の技を見ると、手仕事はやっぱりていいな。と思います。
あなたにもジャムダニ織りの魅力が伝わたでしょうか?



彼らが作る貴重なジャムダニ織りストール
今年も多くはありませんが仕入れることができたので
日本に戻ったらあなたにご紹介できるよう準備をしたいと思います。
ぜひ楽しみにしていてください。




そしてまた来年彼らを訪ねたいと思います。





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