はじめに
インドの織物文化はとても古く、
地域によって生産方法や、素材、デザインなどが大きく異なります。
私たちは自分達の足で現地に行き原料の生産者や工場、お店を訪ねます。
実際にストール作りに携わる人達と直接会話をすることで、
あなたに紹介するストールが誰の手で、
そして、どのような環境で作られているのかを自分達の目で確認する事ができています。
更に直接現地に行く事で
本やインターネットには載っていない情報も手に入れる事ができます。
その経験から得た知識や情報を
この買付日記を通じて少しでもあなたに知って頂きたいと思います。
〜ラージャスターンのブロックプリント〜
インドのラージャスターン州はブロックプリントと呼ばれる
インドの伝統的なプリント技術が今尚産業規模で残っている
世界的にも有名な場所です。
現在、生地にプリントをする方法はいくつかあるのですが
このブロックプリントは木製の版を何度も重ねて押す事で
模様を施していく伝統技術の一つです。
実際に工房がある村を訪ねると
街の至る所でブロックプリントに関係するお店や、工房、
作業風景を目にします。
街中にある工房では多くの職人達が働いていますが、
どの工房を訪ねても快く迎え入れてくれます。
ブロックプリントに欠かせない木版作り
まずはブロックプリントに重要な木版工房です。
木版作りの工程は、
デザインが描かれた紙を木版の元になる木に転写させていく作業から始まります。デザイン画は半透明の紙に丁寧に書かれ、それをセンターポンチのような工具を使いながら、白く塗られた木版に写して行きます。
そして転写を終えると、
繊細なデザインをノミと専用の工具を使って彫っていきます。
力加減を一つ間違えれば一発でダメになってしまう作業を、
彼らは手慣れた手つきで行って行きます。本当に細かな仕事ですが
もの凄い早さでインド人職人は行います。
写真にあるようなサイズでも、シンプルなもので2,3日かかり、
複雑なものになると1週間はかかるそうです。
この版の出来が最終的なデザインに大きく影響するため
一つ一つ確認しながら作業は行われます。
単色であれば一つの木版で良い訳ですが
多色で複雑なデザインを描こうとすれば、
それだけの数の木版も必要になります。
幾つかの版を重ねて一つのデザインを完成させる以上
少しのズレも許されません。
黙々とノミを叩く職人達の仕事は流石の一言です。
まだまだ木版職人の技を見ていたいという気持を抑えて
実際に版をおす工房を訪ねます。
繊細な判押し工程
工房に入ってみると
長い台に生地が綺麗にセットされ
何人もの染め職人達が先ほどの木版を使って
生地に模様を施していました。
生地に対してとても小さな木版を
こちらもリズミカルに「トン・トン・トン」
と驚くようなスピードで、そして正確に版を押していきます。
さすがに機械とは違い、一つ一つのデザインが合わさる事はありませんが
その微妙なズレこそ、手作業の味わいであり、その証です。
ブロックプリントは花を多色で描くのであれば
花びらの輪郭、花の色、茎の部分、そして葉の部分と
それぞれの木版で一つの花を描くため
それをズレないように押していく事が判押し職人達の腕の見せ所です。
何色も使うデザインで、更にデザインが細かければ細かい程
その版をおす工程は増えるので
本当に気が遠くなるし、とても神経を使います。
単色のデザインであっても1000回以上版を押し、
それが複雑な多色になると2000~4000回にもなるのですが
それをリズム良く簡単そうに職人達はこなして行きます。
私たちも実際に体験させてもらいましたが、
当たり前ですがそんな簡単にできる訳はなく、
この伝統の技を先祖代々何千年と受け継いできた彼らの凄さを
身を持って体感しました。
人の手で作られる一枚
今回ブロックプリントの工程を一つ一つ確認しましたが
どの工程にも熟練の職人の技がありました。
機械で作られるモノが多いこの時代に
これだけ人の手によって作られるストールは本当に貴重だと思います。
ブロックプリントのストールは
機械のプリントとは異なり、柄がずれたり、色がかすれたりしています。
ただそれは、こうして一つ一つを職人達が手を加えて作っている証でもあり、
その結果機械には出せない温もりを表現する事ができます。
インド、ラージャスターンのブロックプリントは素晴らしい伝統の技です。
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